1章. 真莉の告白と優菜の返事

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「じゃあそれ着るよ」 「えっ?!」 「なんで?チャーハン作って油はねしたら、そのまま捨てられるよ?」 「いや、でも」 「あ…大事に取っておきたいんだ…」 優菜はやれやれ…といった感じで、違うシャツを手にとってブラウスの上から着た。 そしてさっさとキッチンに行ってしまうので、俺の方が焦る… 未練なんてまったくないし、なんなら今の今まで完全に忘れてた。 ただ、優菜に取り出されたとき、ほのかに前カノの香水が香って…別れた時の顔を思い出しただけ… 「…優菜?」 我ながら、情けない声。 「いい匂いがする彼女だったんだね?」 嫉妬してるとは思えない、明るい調子で言う。 「…別に、未練なんて全然ないよ。ただ確かにここに泊まったことはあった。もう2年くらい前の話で、それ以来女の子は入ってない…あっ!琴音が響さんと揉めて、1回来たことあるけど、すぐに響さんが来て、秒で帰ったし…それからは…」 「わかったよ!」 見ればチャーハンが出来上がってて、小鍋にスープらしきものまでできてる… 優菜、料理上手なんだな…。 「あったかいうちに、食べよ?」 小首をかしげる優菜を見て、さっき浮かんだ前カノの顔は、綺麗に記憶の彼方に飛んでいった。 優しい味のチャーハンは優しい優菜の味がする。 女の子と食事をして、こんなにあったかい気持ちになるのは、初めてだ。 お風呂の準備をしながら、俺は洗い物を引き受ける。 そして、なんとなく落ち着かない気持ちになった。 優菜、泊まっていってくれるのかな。 だとしたら、いきなり一緒のベッドで寝るわけにはいかないよな。 優菜はこの部屋に、もうすでに何度も遊びに来ている。 でも夜更け前に帰したし、変なムードになったこともない。 それは、俺の気持ちが大きく関係していたと思うんだけど、それをいうなら…今の俺の気持ちは相当ヤバい。 ヤバいというのは…男特有の、何て言うんだ、これ。 「お風呂じゃんけん、する?…どっちが先に入るか」 「…はい?」 モヤモヤ考えながら洗い物をしていて、全然終わらない俺は、手を泡だらけにしたまま振り返る。 優菜はソファに寝そべって、腹這いになってこっちを見ていた。 …カーテンを引き忘れたベランダの窓に、優菜の後ろ姿が映っている、、。 「お風呂入ってから寝たいよ」 「あ、それはもう。先に入っていいよ」 泊まるつもりだと意外なところで確認できた。
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