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お風呂が沸いたメロディが鳴り、優菜がキッチンでまだ洗い物をしている俺のそばに来る。
「このシャツ、パジャマにしていい?」
「新しいの、出すよ」
油はねしたんじゃないのか?
慌てて泡だらけの手をぬぐって寝室に行こうとしたら、優菜が自分で勝手に出すという。
「別にいいけど、今日は俺が出すから」
さっきみたいな前カノのブツが出てきたら困る。覚えてないけど、それこそ下着とか出てきたら絶対困る…!
優菜は今度はついて来なかった。
俺から白い長袖のシャツを受け取ると、ニコッと笑った。
…近いうち服を全部ひっくり返して、怪しいものがないかチェックしとかないと。
異様に時間がかかった洗い物を終え、ソファに座ってホッと息つく。
妙に高鳴る自分の心臓…
もしかしたらこんな気持ちは初めてかもしれない。
おかしいな。
恋人と呼べる女の子と夜を過ごすのは初めてじゃないのに…
「…このシャンプーいい匂い…!」
濡れ髪のまま、優菜がリビングに戻ってきた。
「…真莉ちゃんと同じ匂いがする」
俺の横にポスン…と座った優菜。
こんなあどけない顔は、初めて見る…
けど………。
「家で1人で過ごす時と同じでいいでしょ?真莉は恋人だから、もうカッコつけなくていい?」
「うん、もちろんいいよ」
いいけど…
いろいろ目のやり場に困ってる。
目のはしに映る白い太ももは、破壊力最強なんだが。
「…ジャージ貸そうか?足、寒いだろ?」
「ん?いつもこんな感じだから大丈夫」
知らん顔して目の前を通り過ぎる。
俺の気も知らないで…
風呂から出てみれば、ベッドですやすや眠る優菜に気づいた。
壁側に寄って、ちゃんと俺が入る場所を空けている…
なにこれ。
キスも頭真っ白で記憶にないのに、今度は理性を失わせる気?
どうこう考える前に勝手に体が動いて、ベッドの空いたスペースに横になった。
優菜の温もりで毛布の中があったかい…
「ごめん…先に寝ちゃった、」
寝ぼけた声でそう言いながら、モゾッと体を動かした。
そのタイミングで、首もとから腕を入れて抱き寄せる。
「…いいよ。疲れたろ?おやすみ」
俺は、おやすみできそうにないけど。
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