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ふと気づけば、カーテンの向こうが明るい光に照らされている。
「起きた?」
至近距離で見つめるいたずらっぽい目。
「…うん。あー、少し寝れたんだ」
昨夜、必死に目を閉じて、煩悩と戦っていた自分を思い出す。
伸びをしようとして、ふと気づいた…
俺の手は、滑らかな優菜の足に触れていることに。
「あ、ごめん」
「…ん?何が?」
「なにが…って」
言い淀む俺に、優菜が抱きついてくる。
「真莉…大好き。響を好きだった気持ちとは違う意味で好きだよ」
喜ぶところなんだろうけど、それどころではない…
密着されて落ち着かない。
伸びをしかけた両腕は上がりかけたまま止まってる…
その胴体にすり寄る…猫みたいな優菜
「真莉は…?」
「え、俺?」
仕方なく両腕を下げて、そっと優菜を抱きしめる格好に落ち着く。
「好き…です。ずっと…ドキドキしっぱなしで、ちょっとヤバい」
好きって言ってすぐ。
付き合ってすぐ。
そういうことして嫌われないかな。
そんなこと…思ったことなかった。
でも俺は、俺の腕の中におさまる優菜に、妙に怖気づいて、この先の行動をやたら考えてしまったんだ。
「時間がないの。いっぱい甘えたい」
時間がない…?
そう言えばこの前も、急に終わったらごめんとか、物騒なこと言ってたっけ。
「それどういう意…」
味…って続けるはずが、優菜の唇に塞がれて宙に浮く。
一瞬離されて目を合わせれば、その顔が赤くなってて…俺はたまらず自分から口づけた。
…いや待て俺。
落ち着け俺。
仕切り直せ、俺…!
女の子と付き合うのは初めてじゃないのに、初めて感じるどうしようもない気持ちを…必死に抑えようとした。
「…っ!なんでそんなこと言うの?」
勢い余って、優菜を抱きしめながら、ガバっと毛布をはいで起き上がった。
瞬間目に入る白い足…
「…あ。寒い?」
「ううん…」
大丈夫そうだけど、毛布をたぐり寄せ優菜をくるんで抱きしめる。
「ちゃんと教えてよ…急に終わるとか、時間がないとか」
「うん…」
優菜は俺にピッタリくっつきながら、体育座りみたいな格好で座った。
「私ね、お見合い結婚することが、生まれた時から決まってるの」
「…は?…生まれた時からって…」
「うち、父が笹川開発って会社を経営してるでしょ。跡継ぎは兄だから、そういう心配はないんだけど、その代わり…」
「…その代わり?」
「娘は、笹川開発にとって、有利な企業の息子と結婚するって決まってるの」
「それって…政略結婚ってこと?」
「そう…だね。大学に入る時家を出て一人暮らしを始めたんだけど、その時父に言われた。…自由なのは25歳までだって」
「そん…な、優菜、誕生日確か…」
「うん。先月だったよね。ケーキ、買ってもらったもんね」
「それじゃ、いつ実家に連れ戻されるかわからないってこと?」
優菜は俺から目を逸らして、体育座りを崩すように寄りかかってきた。
華奢な体を抱きしめながら…
ちょっと待ってくれ。理解が追いつかない。
「ごめんね。ちゃんと言わなくて…
でもね、真莉ちゃんには、私を利用して欲しかったんだ」
「…なに利用って…?」
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