1120人が本棚に入れています
本棚に追加
2章. 親への挨拶と、始まる同居
とはいえ、どうしたらいいんだ?
まさか敵が、実家の親だとは思わなかったぞ。
「真莉、そろそろ帰るね」
いつの間にか昨日のスーツに着替えていた優菜が、腕時計をしながらこちらに来た。
「…じゃあ…またね」
優菜はそっとかがんで、俺の唇にキスをしてくれる。
あー…嫌だなぁ。離れるの。
そう思いながら、じっと見つめるだけの俺に微笑みかけて、優菜は玄関に向かって歩き出した。
「…ちょっと待った」
「…?」
「荷物持って戻ってきて。…じゃなくて、俺も一緒に行く」
「ん?どゆこと?」
俺は優菜の手を引いて、駐車場に停まる自分の車に乗り込んだ。
………
「は…ここが、優菜の住まい…?」
「うん、まぁ…。社会人なのに恥ずかしいんだけど、父が心配して、セキュリティのしっかりしたところに住むようにって、こんなところに」
白亜の豪邸…といった感じ。
正確には、他にも居住者がいるらしいから、マンションなんだろうけど…。
低層の、こんなすごいマンション初めて見る。
「あーこんなすごいとこに住んでるとは思わなくて、俺んちみたいなマンションじゃ、狭すぎて居心地悪いか…」
安全面も、絶対ここの方が安心だ。
何しろうちには、「俺」という、優菜にだけスケベを働きたい20代男子がいる。
危険極まりない…
「ううん…真莉んちに行きたい…」
いつの間にか、シャツの裾を握りしめて、優菜が上目遣いの視線を寄越した。
視線が合えば、うっかり上がってしまう熱…
「うん…おいで」
甘くささやけば、優菜が手を取って、豪邸マンションに導いてくれた。
部屋に入れば、とたんに鼻腔をくすぐる…優菜の甘い香り。
妙に高鳴る心臓を感じながら、目に飛び込むのはピンク色のカバーをかけたベッド。
「…あっ!片付いてないから、見ないで!」
「寝室から持っていくものは、ないの?」
「ん?あるよ。枕と、パジャマと…」
慌ててドアを閉められたけど、誘導するように聞けば、簡単にもう一度ドアが開く。
「毛布…は、真莉のところにあるからいらないか…あ、でも」
俺はベッドに腰かけて、持っていくという枕を無意識に抱きしめていた。
「一緒に…寝るの?」
「…あ」
実は…朝起きて真相を聞いた後、最後まではしなかった。
すごく愛しく思ったし、タイミングとしてはバッチリだったのに。
なんというか…俺が触れると、優菜が少しだけ震えたような気がしたから。
もしかして今じゃないのかもしれない…そう思って、強引にコトを進める気にはなれなかった。
だから、しつこいくらいキスはしたけど、さっと体の線をなぞっただけで終わってる。
だから正直今、ちょっとヤバい。
「ね…るよ?」
俺の答えに、優菜はにっこり笑って「嬉しい…!」なんて言う。
俺だって嬉しい。
今日からずっと、優菜を抱きしめて寝れるなんて…朝起きれる気がしない。
こうして始まった…優菜との同棲生活。
最初のコメントを投稿しよう!