おはなしのすみか

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あるところに、気持ち温もりを帯びた、大きな建物がありました。 その建物には、手のひらからぞろぞろと溢れるおはなしよりも、ずっとずっと少ない数の本が置かれています。 それはもう、貴方がとても可愛らしく小さな頃から。 しかし本とはいっても、おはなしが、文字が、絵が、写真が、そのほか何も見えません。 わからないようで、わかるようで、どうしても。 めくってもめくっても、昔から今まで、そしてこれからもずっと。 何も見えない紙で終わり、また何も見えない紙で始まる。 絶えず、飽きず、変わらず、それを繰り返すだけなのです。 隣のページも、隣の本も。 それでも本たちは居場所での役目を果たし、時間が過ぎる度に姿を変えていってしまう酸素で、誇りと共に呼吸をします。 ただそれだけの日々を送るため、今日もまた目を瞑るのです。 そうなるはずでした。
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