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天界では今日もかわいい天使達が下界にいる人間達を眺めていた。天使は全ての人間の心まで読むことができた。
一人の新米の天使が電車の中を覗いていた。天使は建物などを透過して状況を見ることができる。
「女性の人が年老いたおばあさんに席を譲ったわ。優しい心の持ち主ね。天使ポイント二百あげるわ」
それを聞いていた他の先輩天使が腕を組んで溜め息を吐いた。
「二百じゃないわ。二千よ。女性は妊婦なのに席を譲ったのよ」
「ああ、そっか。妊婦なのに席を譲るなんて素敵な人ね」
一人の青年が杖をついた女性に席を譲っていた。
「あの青年もいい人ですね。百ポイントかな」
先輩天使がさっきよりも溜め息を吐いた。天界中が溜め息で包まれるほど長く大きな溜め息だった。
「青年の心をよく見なさい。あの青年は女性に好かれるために席を譲っただけよ。その証拠に席を譲った女性を近くから嫌らしい笑顔で眺めているじゃない」
「そっかー。じゃあ、あの青年は何ポイントなんですか?」
「マイナス二万ポイント。地獄に直行してるわ」
天界では天国に行ける天使ポイントが全人類に付与されていた。累計五千万ポイントになった人間は死後、必ず天国に行ける。
天使達は人間を見る精度を高め合い、厳正な審査に通った者だけが晴れて天国に行くことができた。天国に行ける人間は希少で、死後の世界は甘くはなかった。
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