煙の行方

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カヤトは静かに葉巻を置き、深く息をついた。 長い間、胸に抱えていた重荷がようやく解き放たれたようだった。 マスターは無言のまま、ゆっくりとコーヒーカップをカヤトに差し出した。 「お前は本当に、自分自身を取り戻したんだな。」 カヤトはその言葉を噛みしめ、カップを受け取った。 「これでようやく、俺も前に進める気がするよ。」 店内には静けさが戻り、淡々と豆を挽き続けた。 その音が妙に心地よく、カヤトは一口コーヒーをすすり、ほっとした表情を浮かべた。 「ありがとう」 「いいんだ」 マスターいや、カヤトの祖父は穏やかに微笑んだ。 「これで、全てが元に戻った」 その瞬間、店のドアが静かに開いた。外には誰もいない。 ただ、夜の静けさと共に、微かにタバコの香りが漂っていた。
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