『明日』

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 笑い終わったのか雪夜が「面白かった」と言葉を漏らしながら思い出したかのように鞄を漁り始める。少し鞄を漁り、すぐに求めていたものが見つかったのか鞄から何かを取り出した。私の目に写ったのは一冊の本だった。 「これ、良かったら読んで欲しい」 「文庫本?」 「そう。『明日』っていうタイトルで、今どき長いタイトルが多いのにまさかの漢字2文字の小説なんだよね」  確かに最近はタイトルの長い小説が多いイメージだ。青春系、恋愛系、転生系、そのどれもタイトルが長々と書かれている。  決して悪いと言っている訳では無い。ただ、タイトルが長いと内容を読まずお腹いっぱいになる感覚がある。だからなのか、ここまでタイトルが短いと読みたいという気持ちが強くなる。けれど、本を読むことには少しばかり抵抗がある。 「無理して読んで欲しいって訳じゃないんだけど、僕の中でその話は結構感動したっていうだけだから。それに、本なんて強要されて読むようなものじゃないでしょ」 「……そうだね、ゆっくり読んでみようかな」
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