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「雪夜」
「びっくりした……美南か」
「美南か、ってひどくない?」
悪気は無いからね、と言った雪夜は私の手を引いて読書ルームを出る。話したいことがあるが読書ルームで話すのは違うと感じたのだろう。私もそう思っていたのでちょうど良かった。図書館から出ると雪夜が話し始める。
「ところでどうよ、数ヶ月ぶりの図書館は」
「うん、なんか来てなかった自分が馬鹿みたい」
「なんか、美南……吹っ切れたことでもあるの?」
「どうして?」
「いや、なんか、明るくなったなと思って」
「そうだとしたら、多分この本のおかげかな」
私が本を読んだことに驚いたのだろう。雪夜は目を丸めていた。そんな彼を差し置いて話を振る。
「この本一切背中を押す気ないよね」
「それは分かる」
「でも、明日も生きるしかないんなら、自分でなにかするのも悪くないなって気付かされたよ」
「『生きることに理由がないのならば、生きる必要は1つもない。けれど、生きることが難しいように死ぬことだって容易なことではない。』この言葉だけが僕の頭から離れないんだよね」
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