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 女中頭とともに旦那様の執務室に入る。 「ああ、より子。……おかえり」  まるで我が子に向けるような深い愛情をたたえた表情で、旦那様は私を迎え入れてくれた。実の父親にも向けられたことのない眼差しに胸が詰まる。  旦那様の隣にいた奥様も同じ表情でこちらに来る。 「おかえりなさい」  奥様とは私の両肩に手を置いて、それから頬を撫でた。 「少し痩せたわね」  奥様は私の背中を押し、ソファに座るように促す。私は促されるままそこに腰を下ろした。 「あの、わたし……」 「何も言うな。良い良い。夕飯は食べたのか?」 「はい……。しばらくの間お休みをいただき申し訳ございませんでした。休んだ分まで――」 「そんなことは良い。たまには櫻子から離れて気を休めることも大事だろうから」 「いいえ、私は寂しかったです」 「そうか。櫻子も、今宵は嬉しかったのだろう。夕食の席ではよく笑っておったな」  お嬢様も私がいなくて寂しいと思っていたのだろうか。そうだったら嬉しいと思う。 「おほん、それでより子」 「はい」 「ええとだな、……その、悪い男たちを捕まえるのにだな……」  旦那様が言葉を選んでくださっているのが分かる。 「忠之様たちが捕まえてくださったと伺いました」 「そうなのだが、うちの男たち以外にも協力して、茂以上に動いてくれた者がいるのだ」 「そうなのですね。そのお方は?」 「明日、うちに来てくれるそうだ」 「私からお礼を申し上げてもよろしいでしょうか?」 「もちろんだとも。しかし無理はするでないぞ。さあ今日は下がりなさい。ゆっくり休むといい」 「ありがとうございます。これからも、誠心誠意、お仕えすると誓います」  私が頭を下げると、真面目なんだから、と奥様に笑われてしまった。  女中頭と共に退室する。
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