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すぐに悪魔が現れた。
「そんなの、美香を無視するの一択だろ」
悪魔は肩を竦めて言った。
「美香に話しかけて、彩奈に嫌われたらどうする?今度は莉子が無視されるぞ」
「そ、そうかも」
「だいたい、美香とそんな仲良くねえだろ?こんな時だけ無駄に正義感振りかざすのってダサくねえ?」
「そうかな」
「そうさ。ほら、見てみろ。お前の友達も、あまり美香に関わるなって顔してるぞ」
私は、悪魔に言われてちらりと友達の方を見た。何だか悪魔の言う通りのような気がしてきた。
なので、私は美香ちゃんから思わず目をそらしてしまった。
「り、莉子ちゃん……」
美香ちゃんの悲痛な声がした。
ダメだよ、そうだ悪魔の言う通り。美香ちゃんに今関わってろくな事ないに決まってる。そうだよ。そうだよね?ねえ?
私は脳内で呼びかける。
ねえ、何で天使は出てきてくれないの?
ちらりと私は美香ちゃんを見た。
泣きそうな、でも気が強いから絶対泣かないように顔を真っ赤にしている美香ちゃんを見た時、私は天使との反省会を思い出した。
『莉子は優しい子だし、やればできる子なんだ……』
――そうだ。私は優しくてやればできる子なの。
――優しい子は、美香ちゃんを無視する?いやしない。
――やればできる子は、正義感振りかざさない?いや、振りかざす。
私はそう自分に言い聞かせると、美香ちゃんに近づき、そして無理やり頭を両手で掴んで顔を上げさせた。そして笑顔を作ってみせた。
「美香ちゃん、一緒に体育館行こ」
「ねえ、莉子ちゃん!」
呆れたような、非難するような彩奈ちゃんの声を聞かないフリをして、私は美香ちゃんの手を握って立たせた。
「ほら、早く行かなきゃ授業遅れるよ。皆も行こ」
私は、友達にも笑顔でそう言う。友達は少し戸惑った顔をしてたけど、すぐに頷いてくれて、一緒に体育館に向かった。
振り向くと多分彩奈ちゃんが怖い顔をしているような気がしたので、絶対に振り向かないようにした。
美香ちゃんは私に小さな声で「ありがとう」と言った。
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