天使の願いごと

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 * * *  ……プルルルル、ガチャッ 『もしもし? ごめんね、みわ。芸能活動に忙しいのに、付き合わせちゃって』 「ううん、いいの。ちゃんと断ったよ、あのトオルって人。お母さんを慕っているみたいだね」 『……なら良かったわ。まだ利用できるってことね』 「でもお母さん、気をつけてよ。忠誠心がないからってひっきりなしにクビにしていったら、スタッフがいなくなっちゃうよ?」 『みわはそんなこと気にしなくていいの。国民の天使、水野和胡として……これまで通り日本中の男子を虜にしてよね』 「まあそうだけど。でもトオル君は絶対に見放したらダメ。トオル君には、お母さんしかいないんだもん」 『そうね。私が見放したら、捨て犬みたいになっちゃうもんね』 「もう、相変わらずのブラックジョーク、やめてよ」 『はいはい。それじゃあ切るわね。そろそろトオルが帰ってくるから』  ……お母さんの言葉を最後に、電話は切れた。  私は観月みわ。芸名は『水野和胡』で、お母さんは『出張セラピー プルーフ』の女性オーナーをやっている。  お母さんはとても五十代には見えないほど綺麗で若々しい。  でも、私と違ってとても冷徹だ。  自分の思い通りに動かない人がいたら平気でクビにするし、最悪の場合人攫いに頼んで社会的に抹殺したりする。  その判断基準に、私が使われているのだ。  私のようなアイドルと付き合う機会が降ってきても、仕事を優先するのか……。  ……今回のターゲットは、ちゃんとお母さんに忠誠心があったみたいで良かった。  これ以上お母さんが、悪人になってほしくないから……。 〈了〉
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