プロローグ

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プロローグ

 お城で開催された王子さまのお妃さま候補選びの舞踏会の夜のこと。  ほかの娘たちよりもずっと遅れて夜ふけにやって来たその令嬢は、だれよりも注目を集めた。  目を見張る美貌、見事なブロンドヘア、月の光のように輝く繊細で洗練されたティアラ・イヤリング・ネックレス。  その華奢な体を引き立てるセンスの良いドレス。しかもドレスの色は、令嬢の美しい瞳と同じ鮮やかなサファイアブルーなのだ。  人々はその令嬢の優雅な身のこなしと、気品のある笑顔に息を呑む。  若く凛々しい王子さまはエメラルドの瞳を輝かせ、令嬢の前に進み出て歓迎の挨拶。  令嬢は綺麗に並んだ歯を見せて微笑む。  その笑顔を見た王子さまは幸せそうに微笑むと、優しく令嬢の手を取って大広間の中央までエスコート。  そして二人は優雅に踊り始める。  王子さまと令嬢。二人ともダンスの名手であり、だれもが認める文句なしの美男美女のカップルだった。  王子さまのお妃の座を狙う若い娘たちでさえ嫉妬心すら湧かないほどの完璧なカップルだ。  その時、十二時の鐘が鳴り始めた。だが令嬢は鐘の音など耳に入らない様子で、王子さまと踊りつづけている。  十二回目の鐘の余韻が消えたとき、令嬢をお城まで運んできた馬車が静かに走り出した。  だがその馬車には、令嬢は乗ってなかった……。
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