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暗くなる前に、と私は外に出た。
向かう先は、近所のコンビニだった。ダルダルの部屋着に一枚羽織っただけのラフな服装で、5分ほどの短い散歩をする。
せっかくの休みだし、お酒を飲んじゃおうかな。ツマミは何にしよう。
ぼんやりと考えながら、コンビニに行くまでは、普段の休日と何ら変わりはなかった。
だけど、その日のコンビニは、いつもと違っていた。
コピー機の横に、大きなトンネルができていたのである。
「え?」
思わず目を逸らし、もう一回コピー機の横を確認した。やっぱりある。見間違いではないようだった。
そして、もうひとつ奇妙なことに気がついた。
誰もトンネルがあることを気にしていないようなのだ。店員さんも、お客さんも、誰も二度見すらしていない。
私は、となりで雑誌を立ち読みしているサラリーマンに声をかけた。
「あの、すみません」
「はい?」
「このトンネル、いつからあるんですか?」
「トンネル? ……そんなの、どこにもありませんけど」
「え、ない?」
サラリーマンは「何を言っているのだ、この人は」という目で、私を見た。
彼が、嘘を言っているようには見えなかった。だけど、私だって嘘は言っていない。
私以外、トンネルを認識していないのか?
どうしてだろう、とトンネルを観察しようと近づいたその時だった。ぐん、と力強い力で、トンネルの中から引っ張られた。
「!?」
驚いて声も出せない間に、私は中に引き摺り込まれた。
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