0人が本棚に入れています
本棚に追加
それから、しばらく私は街を探索した。
ラムネのようなものを飲んだり、ハニワの顔をした子どもたちとヨーヨー釣りをしたり、鬼ごっこをしたりした。
子どもたちは、私が人間であることを気にしていないようだった。綿菓子を眺めている私を見るや否や、遊びに巻き込んできた。
子どもたちは、夜が遅くなってくると「そろそろ帰らないと怒られちゃう」と慌てて家に帰って行った。
「また遊ぼうね」
子どもたちは、口々に言った。
最後のひとりの子どもを見送ると、私はひとりぼっちになった。さっきまでの賑やかさが嘘のようだった。
ひとりになると、急に、現実が目の前に突きつけられた。
この後、私はどうすれば良いんだろう。
夢見心地でも、ここは夢ではなかった。
スープは良い匂いで美味しかったし、子どもたちと鬼ごっこをすれば体はちゃんと疲れた。
私は、元の世界に帰らなければならないのだ。
だけど、私は帰り方を知らなかった。
このまま元の世界に帰れなくなってしまうんじゃないか、と怖くなった。
「どうしよう」
助けてくれる人は誰もいない。
自分でどうにか帰り道を探すしかないのだ。
止まっていても仕方ない、と私は歩き始めた。帰る手がかりがない以上、足で探すしかない。
その間にも、灯りはひとつ消え、ふたつ消えていく。街から段々と人が減り、静かになっていった。
古い神社にたどり着いたのは、灯りがすべて消えて真っ暗になった頃だった。
人間の世界じゃなくても、神社は厳かな雰囲気で、光がついていないと少し怖くもあった。
鳥居を抜け、真っ直ぐに歩く。すると、本殿に突き当たった。
「どうか帰れますように」
私は両手を合わせ、手を叩いて祈った。
顔をあげた時、本殿の扉が少しだけ開いていることに気がついた。
「うん?」
私はそっと扉に近寄り、内側に力をこめて押した。ギイッと音をたてて、扉は開いた。
罰当たりかもしれない、と思いつつ、私は中へ上がらせてもらうことにした。そろそろ、屋根のあるところで休みたかった。
最初のコメントを投稿しよう!