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ボクが、もう一人?
朝起きたら、宿題が出来ていた。
二学期の始まり前夜=夏休み最後の夜、やってもやっても終わらない。うっかり寝てしまって起きたら日が昇っていた。
半泣きで机を見たら。
全部出来上がっている。プリントも、ドリルも、読書感想文も。全部ボクの字。
部屋を見回したら、薄く向こうが透けるボクが、そおっと押入れに隠れるところだった。
「きみがやってくれたの?」
もう一人のボクは、ポーカーフェイスっていうの? 顔の表情を全く変えずにうなずいた。
「あ、ありがとう。感謝感激雨嵐……あれ、何か違う? いいや、とにかくボク、きみにありがとうを百回でも二百回でも言うよ!」
ボクは、もう一人のボクの手を取って、何度もたてに振った。ねえほら、顔がそっくりなだけじゃなくて、ちょっと丸まっこい手の指の爪の形がおんなじ。
きみは、だれ? ボクの分身?
ボクが涙をだらだら流して手を握り振り続けるものだから、彼は押入れに半分足を突っ込んだままゆらゆらと揺れて……そして小さく微笑んだ。
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