異常なチャンピオン➕追伸

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異常なチャンピオン➕追伸

ついに、私は決勝戦まで勝ち上がった。 去年、一昨年と一回戦で負けその悔しさを バネに私は修行を重ね続けた。 そして、今日はその決勝戦。 だが、その対戦相手は去年と 一昨年の優勝者。チャンピオンである。 相手にとって不足は無い。 歓声を浴びながらリングに上がった二人。 視線が重なる。 観客とは違い、重い雰囲気の二人。 レフリーがルールの説明をしているが、 私の耳には届いていない。 相手は表情ひとつ変えず私を睨み続けている。 その顔には冷酷な殺人者を彷彿させる異常さがあった。 だが、私は恐れはしない。 どの様な男でも勇気をもって戦う。 そう、私は修行を重ねて精神も強くなったのだ。 だが、相手はチャンピオン。 私を睨み襲いかかってくるかの様な仕草を見せている。 それに怯む事なく戦う私。 両者互角のままもつれ合うが、 彼は思いもよらない行動をおこす。 それは、今振り返っても想像を絶する変顔だった。 私の気持ちのタガが外れた。 悔しいが、私は負けた。 悔しいが笑ってしまった。 負けた私の笑い声が会場に響いている。 負けたのに! 悔しいのに! 私は笑い転げている。 だが勝者は、いまだに表情を変えていない。 優勝賞金50万円を手にしながらも、 彼は喜びを表さない。 悲しい事に、彼には一切の笑みは無かった。 そうこれがどんな時でも笑ったら負けの 「睨めっこ大会」の厳しいルールである。 私は今も彼の変顔を思い出すたび、笑い転げる。 負けた相手が愉快になり、勝者には笑顔も無い。 そんなゲームが、睨めっこです。 追伸 この小説にボケはありませんが、 睨めっこ大会が本当に存在していたら 面白いでしょうね。
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