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第一章 たこ焼きや鬼ヶ島
「おにいちゃん、たこせんちょうだい」
数人の男子小学生が次々に店先のカウンターに十円玉を置く。
「あいよ」
それに笑い返し、マサは焼き上がっていたたこ焼きを手際よく、えびせんべいに挟んでいった。
ここ、『鬼ヶ島』は町の小さなたこ焼き屋だ。
先代から引き継ぎ、マサがここでたこ焼きを焼き始めてもう五年になる。
「気をつけて食えよ」
「ありがとう、おにいちゃん」
紙に半ば包まれたたこせんを受け取り、手を振りながら小学生たちが去っていく。
それに手を振り返しながら微笑ましく見送った。
ちょうど、小学生たちが去っていった方向から来た学ラン姿の男子が彼らを振り返りながら店先に立つ。
「マサさん。
オレもたこせん、ひとつ」
学ランの彼がカウンターに十円玉を置く。
「ぬかせ。
オメェはもう、中学生だろうがよ」
マサが渋い顔になる。
「へへ、バレた?」
「制服できて『バレた?』があるか」
それでも仕方ないなと苦笑いしつつ、またマサはえびせんべいにたこ焼きを挟んでいった。
この店では小学生に限り、えびせんべいにたこ焼きが三つ挟まれたたこせんを十円で提供している。
とはいえ自己申告なのとマサの判定が甘いせいで、学校帰りの中学生や高校生も十円で買いに来ていた。
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