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01.外堀
「あの、本当なんなんですか?いい加減着いてくるのやめてください。」
あたし今成椿(21)は困っていた。
ナンパは今まで何度もされたことはある。しつこく言い寄ってくる人だって中にはいた。
だけど、この人のような"しつこさ"は初めてだった。
そんなあたしの問いに素知らぬ顔で無視を決め込むこの男、ゆうに180㎝は超えているであろう長身に加えて仕立てのいいスーツを優雅に着こなし、細身に見えるが袖から除く手は大きく筋張っていて男らしかった。
ニュアンスパーマのかかった黒髪に、耳の下あたりまで長さのある前髪はセンターパートで分けられている。シャープな輪郭は男にすっきりとした印象を与え、少し大きめの口元は薄くて赤い。
不意に視線が絡まって、末広型の二重瞼に三白眼の瞳が鋭くあたしを射抜いた。
左目の下にある泣きぼくろがこの人のエロさを無駄に強調している。
な、なんなの……。
見た目だけで言えばかなりいい。
大人の色気垂れ流しの、極上の男だった。
だけどなんだろう、男から醸し出される雰囲気はとても近寄りがたく危うい。無闇矢鱈に関わってはいけないと警告してきている気さえした。
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