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「…あの、警察に通報しますよ?」
しかし、ここで下手に出てしまってはこの男の思う壺なのかもしれない。
あたしは断固抗戦する構えを見せなくてはいけない。
「怪しい者では無い。気にするな。」
ぞくり、初めて発せられた男の声に体の芯が震えた。やけに体の奥に響く艶と重みのある声だった。
「怪しさしか、無いと思いますけど…。」
「それは気のせいだ。…ああ、なるほど。手、繋ぐか?」
え?いや、何で?
あまりの奇想天外な物言いに、この人話の通じない人なのかもしれない。と、手に嫌な汗が滲む。
そんな確実に引いてしまっているあたしに対して徐に伸ばされた男らしい手が、じっとり手汗をかいているあたしの手に触れた。
「っ!ちょっと、何触って、、!」
「恋人ってのはこうやって仲深めてくもんなんだろ?…お前の手、ちっさくて可愛いな。簡単に握り潰せそうで怖え。」
もうやだ、この人本当になんなの?
話が飛躍しすぎて着いていけないし、あたしの手を愛おしそうに撫でる指先がやけに優しくて擽ったい。
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