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「あら? ここは納屋かしら?」
少女はそう言ってオードリーの家の中を物珍しそうに見回す。何だか情けない気持ちになってオードリーが黙っていると、少女は両手でスカートを裾を摘んで腰を曲げる。
「申し遅れました、わたくしはオーガスタ・エリュティア。この国の第6王女にございます」
お金持ちのお嬢様だとは思っていたが、まさか王族とは予想しておらずオードリーは林檎とパンを床に落として慌てて平伏した。
「まぁ、頭を上げてお立ちになって下さいませ。わたくしと同じお顔のあなたが平伏するだなんて不愉快ですわ」
オーガスタの不機嫌そうな声が上から降ってきて、オードリーは恐る恐ると立ち上がる。するとオーガスタは満足そうに微笑む。
「それで? あなたのお名前は?」
「……オ、オードリーと申します」
震え声で名を告げると、オーガスタは手をひとつ叩いて喜ぶ。
「オードリー! とても素敵な名前ね! だけどごめんなさい、あなたにはその名前を捨ててもらわないとならないの」
楽しげな様子で続けられた不穏な言葉にオードリーは首を傾げる。
「……それは、どういうことでしょうか?」
「どういうって、あなたにはわたくしになってもらうのよ」
そんなことも分からないの? なんて言い出しそうな表情でオーガスタは答えたが、オードリーにはやはり何が何だか分からなかった。
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