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オーガスタはオードリーが毎晩使う粗末なベッドに断りもなく腰かけてから語り始める。
「わたくし、ちょうど1ヶ月後にニェビェスキ王国の第13王子であるジェフリー・ニェビェスキ様と結婚しますの」
オードリーは自分と同じ位の年齢であるオーガスタが結婚だなんて言い出したことに戸惑うも、慌てて祝いの言葉を口にする。
「お、おめでとうございます」
しかし……。
「冗談はよしこさんですわ! わたくし、あんな男と結婚など致しません! あなた、知っていらして? ジェフリーがどういう男か!」
オーガスタは声を荒らげて怖い顔でオードリーを睨む。ぎょっとしたオードリーが頭を勢いよく左右に振ると、王女様は咳払いをしてから続ける。
「ならば教えて差し上げますわ。ジェフリーは愚鈍で根暗な暗愚だというのが専らの噂ですわ。わたくし、そんな男の花嫁になんてなりたくはない! わたくしには心に決めたお方がいらっしゃるの!」
瞳を潤ませて体を震わせるオーガスタの様子に、オードリーはもう分かりきっていることを訊ねる。
「王女様は、その方と一緒になりたいのですか?」
「ええ、そうです。その方は宮廷庭師見習いのハミルトンという快活な殿方です。わたくしのこのワガママな性格ごと彼はわたくしを愛してくれています。そんな度量の広い素敵なハミルトンと共にわたくしはこの国を出て行きたいのです。……ですからどうか」
オーガスタはベッドから立ち上がると、先程のオードリーと同じように床に平伏した。
「どうかわたくしの代わりにあなたがオーガスタとなり、ジェフリーと結婚をして頂けませんか? お願い致します」
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