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結婚式までの1ヶ月間、オードリーはオーガスタとなる為に死ぬ気で努力をした。基本的な読み書き計算以外にも外国語を数種類。日常の礼儀作法の他に式典などでの振る舞いや、ダンスも覚えた。
何度かオードリーと入れ替わって王宮で過ごしたことがあったが、目の前の王女がニセモノであることに誰も気がつくことはなかった。
しかし、ヒヤリとした場面は何度かあった。それは主にふたりの性格の違いが原因だ。オーガスタは不遜でわがままなお喋りであるが、オードリーは気弱な引っ込み思案で喋ることは得意ではない。
それについて何度か言及されそうな雰囲気にはなったが……。
「きっとマリッジブルーなんだろう、意外に繊細な所があるんだな」
「結婚という節目で淑女としての自覚がやっと芽生えたのよ」
「跳ねっ返りワガママ王女さまが大人しいことにはなんの不都合もない、平和が一番さ」
という感じに、勝手に納得されてしまっていることをオーガスタの乳母兼侍女であり、この企みの協力者であるキンバリーは語った。
オードリーは気の強いオーガスタが王宮では厄介者扱いされている気がつく。結婚すれば王宮から出て他国へと移る身ではあるが、実家に敵がいるのはなんとも心許無い。
なのでオードリーはオーガスタを演じつつも、やりすぎない程度に王宮内に味方を増やしていくことにする。
特別何かをしたわけではない。会えば挨拶をし、労働に対して正当な対価と共にお礼の言葉を送り、困っている者を見かけたら即座に手を差し伸べる、そんな程度だったが宮廷内のオーガスタの株は急上昇したのだった。
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