3人が本棚に入れています
本棚に追加
✢✢✢
心に深い傷を負っても日常はやってくる。成実は、なんとか平常心を保ち、日々を過ごしていたが、一人になるたび勝手に涙が溢れたり、枯れてしまったその植物が目に入るたびに、罪悪感を募らせた。
シナシナに枯れた植物は、まるで、自分の手で幸せを壊してしまったような感覚だった。どうしても目をそらすことができず、植物のことを思い出しては暗い気持ちになった。毎朝、家を出る時に見る枯れかけの鉢植えが、まるで彼女の心そのものを映しているように思えた。
ある雨の日の夜、成実は、帰宅途中にふと立ち止まった。ベランダに置きっぱなしだった植物に、久しぶりに目を向ける。雨に濡れた鉢の中の土は、どこか悲しげに見えた。「なんで、こんなに頑張って育てたのに、幸せになれないの?」そうつぶやくと、涙がまた頬を伝った。
最初のコメントを投稿しよう!