世界を救う珠

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驚くほど、感情集めは順調だった。 1年で世界中をくまなくまわることは、事実上不可能。 それならばと、各国首脳陣は僕たちの行動範囲に、遠い場所に住む人たちを近づけるようなツアーを組み、出来るだけ僕に多くの人達が近づくことが出来るように配慮してくれた。 とは言え、正直この旅は楽なものではなかった。 世界中を旅する……といえば楽しそうに聞こえるが、滞在中は常に目の届く距離にSPがいる。 食事と就寝の時以外は外に出て感情集めに奔走する。 一か所に留まることはなく、毎日滞在する場所が変わる。 なかなか落ち着く時間が無い、それはストレスだった。 それでも、あと1年でこの星が滅亡することに比べたら……と僕は、そして同行してくれた両親は覚悟を決めた。 英語が堪能な父は、住民とのコミュニケーションにその語学力を発揮し、SNSなどの方面に明るかった母は、インターネットを使って広く自分たちの行動を、そして現在の珠の様子を世界各国に発信した。 その甲斐もあってか、珠は多くの感情を取り込み、明るい黄色に成長した。 僕にはその黄色が、皆の希望の色のように見えた。
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