世界を救う珠

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研究者の女性……博士が小さなジュラルミンケースから出したのは、僕の拳ほどの大きさの、ガラス玉のような球体だった。 「これは?」 「はい、この球をあなたに委ねようと思います。これはあなたにしか操ることが出来ない珠。そして、これがこの世界を救うたった一つの手段です。」 僕は差し出された球を素直に受け取る。 実際に触ってみても、その球はただのガラス球にしか見えない。 「これで、隕石をどうにかするって言うことですか?」 「この球体は、『ある媒体』を通して人々の感情を集めて育つものです。感情が集まり、この球体が育てば育つほど球体内のエネルギーは溜まり、隕石を焼失させることが出来る。そう信じています。」 博士が自信ありげに話す理論。 しかし僕にはとんでもない夢物語にしか聞こえなかった。 「それなら……大統領みたいな影響力のある人が持って歩いた方が、人の感情何てすぐに溜まるんじゃ……。」 何も、小さな島国・日本の冴えない学生がこの球を持つよりも、大統領が持った方がきっと影響力があるに違いない。 「大統領は、適合しなかったのです。」 そうしたかったのですが、と博士は残念そうに言う。 「この球の『ある媒体』。それは球と呼応する『適正を持つ人』のこと。あなたは、その適性が最も人類の中である、選ばれた人間なのです。」 冗談を言っているようには見えない。 博士は真剣な表情で僕を見た。
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