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1 加奈、誕生日おめでとう
「ハッピーバースデートゥユー ハッピーバースデートゥユー ハッピーバースデー ディア加奈ちゃん。ハッピーバースデートゥユー。はい、加奈ちゃん、お誕生日おめでとう」
「ママ、ありがと」
「加奈、今日で四歳だね。おめでとう」
「ありがと、ママ」
今年で四歳になった娘の加奈は、丸いちゃぶ台の上に乗ったケーキ皿に手を伸ばす。
「あら、加奈ちゃん、ちょっと待ってね。お祈りしなきゃね」
私は、加奈のかわいらしい両手をつかんで、顔の前に持っていく。
そして、「ね、加奈、こうやってお祈りするのよ」と正面に座ってから、私は両手を合わせて加奈にお祈りの格好を示す。
「はい、いい子ね。そうそうそうやって、神様にお祈りするの」
「ママ、もうケーキ食べていい」
「加奈、ちゃんとお祈りできた」
「うん」
「じゃあ、食べようか」
加奈は待ちきれなかったのか、その言葉が終わらないうちにケーキに手が届いていた。
「ママ、ママは神様になんてお願いしたの」
加奈はイチゴショートを口に入れてから、そう私に聞く。
「ええとね。今年もこうやって、加奈といっしょに誕生日がお祝いできてありがとうって」
「そうか」
「それでは、加奈はなんてお祈りしたの」
「うん、あのね。加奈はね、洋子ちゃんがもってるようなリカちゃん人形が欲しいって」
「そうか、リカちゃんか。ごめんね。今度、そうだね、加奈が五つになったら買ってあげるね」
「そうか。ね、ママ、五つっていつやってくるの。もういくつ寝たら五つになるの」
「そうだね、まだまだたくさん。だからもうちょっと待っててね」
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