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お面の向こう側
軽視するつもりはない。しかし、痣と顔面崩壊では、格が違うと差別してしまう。
肌色が変わった程度なら、全身全霊で包み込む自信はあるのに――否定しないと信じるに値する人間ではないのか。なんて悲観してしまった。
とは言え、今は噂話の段階でしかない。痣じゃないかもしれないし、私には言えない大きな理由があるのかもしれない。
負の海に飲み込まれまいと、私は踏み込む決意をした。
*
「あぁ、痣は本当の話よ」
「えっ」
あっさり肯定されたけど。
本人に尋ねる図太さは持てず、皿を洗う母に尋ねたら一発だった。兄への愛が、心にハンマーを奮ってくる。
「事故だったの。営業周り中にね。ほら、この辺って暗くなると見通しの悪くなる場所が多いじゃない?」
「そ、そう……顔が崩れてるとかではないんだね?」
「……まぁね」
母は今さらの発掘を嫌悪してか、困った顔でそっぽを向いた。
どうにか納得の理由を掘り当てたくて、情報を引き出そうと試みる。
「酷いの……?」
「今さら急にどうしたの?」
「ちょっと気になることを聞いたから。私何も知らないなって……」
「もう前のことはいいじゃない。お兄ちゃんも元気になったんだし」
上手いこと丸められてしまったが。確かに、面の顔以外、特に問題は――いや、面の顔だって問題ですらない。しかし、疎外感が受け入れを拒んだ。
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