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我が家の四人掛け机は、常に未完成である。
「海音、トマトも取りなさいって」
前の席の母が、大皿のサラダを指す。
「じゃあ父さんは行くよ」
斜め前の父が、空のコップを置き立った。三人分の声で父を見送る。
「お兄ちゃん、サラダのおかわりはー?」
私の隣には、誰もいない。
「いる。取りに行くよ」
歳の離れた兄は、いつも離れのソファで食事を摂る――正しくは、顔の見えない位置で食べた。
皿を携えた兄が、丁寧な手つきでサラダを盛り付ける。じっと見つめた瞳が――狐の面が笑っていた。
兄は人前で、面をつけたまま暮らしている。
その理由を、私は聞きそびれたままでいる。
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