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 ――見たこともないほどに美しい男だと思った。  さらりとした短い黒髪も、鋭く吊り上がった黒色の目も。  男が目を伏せるだけで、頭がくらくらしそうなほどの色気が漂う。  ネーレはこの美しい男と自分が夫婦なのだといまだに信じることができていない。 (そして、このお方が『呪われた王子』だと蔑まれていることも、信じられない)  こんなにも美しい人なのに――とネーレは男の頬に手を伸ばした。瞬間、男がびくんと肩を跳ねさせた。  ネーレは驚き、慌てて手を引っ込める。 「申し訳ございません、出過ぎた真似を……!」  もしもここが母国ならば。ネーレは怒鳴られ、場合によっては殴られもしただろう。  忌々しい記憶が脳内によみがえり、ネーレは目をぎゅっと瞑った。  罵倒されようとも当然のことだ。どんな罰でも受け入れよう。
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