8章

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SHRも終わって帰ろうかと鞄を持った時、翼がいつもどおり寄ってきていた。 「帰ろ、優和。」 「あ、うん。帰る。」 そう返事をして一緒に教室を出て玄関先に向かう。 階段を降りながら玄関に到着すると、慧くんと木更さんの姿が見えた。 今日もずっと一緒に居たな。 そんな感想を抱きながらなんとも無いふりをして自分の下駄箱がある場所へ向かう。 私も翼と帰ってるし、文句言えないよね。 きっと私にとっての翼が、慧くんからしたら木更さんなんだろうし。 わかってはいるけどすごくもやもやする。 きっと木更さんと慧くんが一緒にいる度にもやもやしてしまうのは、私が木更さんに勝てる部分がないからなんだろうな。 才色兼備、美人、誰にでも優しいしっかりした女性、大人っぽくて美男な慧くんに並んでいても全く違和感もない、むしろ素敵だと思う。 慧くん、どうして私が好きなんだろうな。 そんな事を最近少し考えるようになってしまっていた。 私の様子に気づいたのか翼が小さく溜息を吐く。 「よっ、木更、志水」 相変わらずコミュ力おばけの翼は何の躊躇もなく2人の間に入っていく。 何で急に2人に話しかけたんだろう。 「今から帰んの?2人で?」 「ええ、家も近いし別々に帰る理由ないでしょ?」 「まー、そうよな。俺もいつもそれで優和と帰るんだけどさ、今日俺書店寄りたいんだよね。」 翼の急な発言に3人で固まった。 書店行きたいなんて話今はじめて聞いたんだけど。 「だから、志水送ってってやってくんない?こいつ1人だと危なっかしいしさ」 「え、書店だけなら一緒に行くよ。」 私がそう言うと翼は「バカ…」と呟いて私の耳元まで口元を寄せる。 「付き合ってんだから、こんぐらいの我儘言っとけ。たまには一緒に帰れよ、俺が居たら気使うだろ。」 そう言って慧くんの肩に手を軽くポンって置く。 「用事、なきゃ頼んで良い?」 「…別にいいけど。」 「ちょっと、慧!?」 あっさりと答えた慧くんに木更さんが少し驚いた声を出す。 まさかここで受け入れるとは思っていなかったらしい。
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