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Side 翼
「…ねぇ、どういうつもり。貴方もあの人の事好きなんでしょ。何で背中押すような真似するの、意味わかんない。」
目の前で怒る木更を見て確信する。
この子も俺と一緒で長年の片思いをしていたんだろうと。
まっすぐに好きで、自分の恋を実らせるためにきっと何でもするようなタイプ。
何で背中を押すようなって…、そもそももう遅いんだよな。
なんて考えながら「んー」と声を漏らす。
「応援してたら、付き合ったって知った時点で一緒に行き帰りとかしないんだよな、多分。」
この声は木更には届いていなかったと思う。
かなり小さめの声で呟いたから。
その時点で俺も半端に諦めついてなくて、この時間だけは譲りたくないって思っていたんだと思う。
だけどさっき優和の顔を見た時、自信がなくて本当はもっとわがまま言いたいのに言えなくて何もかも我慢しているような表情をしているのを見たら背中を押すしかなかった。
さっきの暗い表情を明るくできるの、悔しいけど志水なんだなって思ったら俺も折れるしかなかったし。
「好きな子の幸せ願うなんて当たり前のことだろ。」
「…綺麗事ね、自分が幸せにする甲斐性がないだけのくせに。」
「おお、手厳しい。まあいいんだよ、形はなんだって。ただ、頼むからあの2人引っ掻き回すのやめてくんね?俺が許せないんだわ、そういうの。」
それだけ言うと木更の言葉を待つ前に俺も校舎を出ていく。
長年の片思いが手放せない理由も、諦めきれない理由も、よく分かるよ。
きっと木更の気持ちは俺が一番わかってやれるんだと思う。
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