9章

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修学旅行出発その日。 翼のお母さんに送ってもらいながら学校まで登校した。 荷物が多かったのもあって、乗せていくと親切に声を掛けてもらったのだ。 そのため楽に学校まで来れて、翼と一緒に集合場所に向かう。 「なんか、優和忘れ物してそう。」 「大丈夫だよ、お菓子だけはたくさん持ってきたし」 「お菓子だけは…?」 私の発言に翼が首を傾げる。 もう何かその表情で言いたいことを察せれてしまう。 「久しぶりに聞くけど、俺が今何言いたいか分かる?」 「そうだなあ…。お菓子持ってきて大事なもん忘れてきてたら意味なくね?」 「相変わらず一言一句当ててるのはすごいけど、その有能さもっと他に使えねぇかな」 翼は困ったように呟くと「あ」と誰かに手を振る。 その目線の先にいるのは木更さんと慧くんだった。 もう何だかその一緒の姿を見るだけで胸がズキッと痛む。 「おはよう!志水!木更!」 「おはよう」 「おいおい、木更。無視は無くね?」 翼と木更さんの間に何があったのかこの2人はかなり仲が悪い。 それどころか最近私までも睨まれている気がするのは気の所為なんだろうか。 最近ひしひしと好かれていないなと言うことだけは伝わってくる。 「聞いてくれよ、志水。忘れ物ありそうって話したらお菓子だけはたくさん持ってきたとか言うんだけど。優和。」 「優和らしい」 「笑ってる場合じゃねぇよ?なんとかして志水」 なんてそんな会話するのも今日だけは何だか素直に笑えない。 いつもならこんな会話も楽しいと思えるのに、今はなんとなく慧くんに会いたくなかったのかもしれない。 せっかくの修学旅行なのに…。 前までは同じクラスが良かったな、そしたら一緒だったのになとか思えていたのに今はもはやクラスが別で助かったと思ってしまっている。 同じクラスに木更さんまでいたら、私はきっと我慢できなかっただろうな。
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