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かといえこの時間も結構来るものがあって、このままこれが最後で別れ話を切り出されるんじゃないかって思ったりもしていた。
動物園の時、自然に繋いでくれた手は今は繋がれないまま。
手…、繋いでくれないのかな。
もう、最後だから?
そんな悪い考えが脳内に浮かぶ。
慧くんを少し盗み見ると、慧くんも何かを考えているような憂いを帯びた表情をしていた。
そんな表情で水槽の中を眺めるから蒼くライトアップされていて神秘的で何だか綺麗。
そんな横顔に目が離せなくなる。
人が多いからいつもより距離も近いのにどこか遠くて簡単に離れていきそうなそんな儚さを感じさせられた。
───離れたく、ないな。
そんな言葉が小さく声になって出るも慧くんには届いていない。
こんな事も素直に言えないなんて、何ならちゃんとこの人に伝えられるんだろう。
横顔を眺めていると慧くんはこちらに向く。
「ああ、ごめん。綺麗で眺めてた。」
なんてわかりやすい嘘。
水槽の中をそんなよく見ている感じじゃなかった。
ボーっとして考え込んでいる様子、いくら鈍感な私でもちゃんと見てるから分かるんだよ。
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