好きな人の好きな人

3/7
前へ
/9ページ
次へ
渚くんが星那さんに何か言いかける。 「……やっぱり、なんでもない。 バイト頑張ろうな。 知らせてくれてありがとう」 でも結局、何も言わず電話を切った。 あたしは、そっと音を立てないようにその場を離れて教室に戻った。 ✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼ 「かーえでっ!おはよー!」 教室に戻ると、友達の(あずさ)が声をかけてくる。 「おはよう!」 さっきまでのことを隠して、あたしは明るく笑顔を見せた。 梓は私の隠した想いを気づくことも無く、鞄から取り出した雑誌を広げている。 「ねぇねぇ、楓 学校終わったらここ寄らない?」 梓が指さすページを見る。 雑誌のページに写るこじんまりとした洋風画のお店。 〘カフェ harukaze〙 紹介された記事を読みながら、あたしはじっと見つめていた。 美味しそうなパンケーキやコーヒーなど、メニューの一部が紹介されている。 オーナーのメッセージも読み合わせていると、渚くんが教室に戻ってきた。 「あ、柏木おはよー!」 「速水おはよー」 梓は、親しく渚くんに挨拶する。少し羨ましい。 渚くんは、席に座るとまたスマホを触り始める。 その内、男子のグループに囲まれて、楽しそうに談笑を始めたのを、少し遠い目であたしは見ていた。 「楓ー?ここ行くの?」 梓に呼ばれ、はっと元に戻る。 「え、あぁ、うん!行きたい!」 「OK!じゃあ、放課後行こうー!」 楽しそうな、梓はあたしにお構い無しで色々喋っている。 ハイハイと相槌を返しながらも、あたしの目線はやっぱり渚くんに向く。 その眩しい笑顔をあたしにも向けて欲しい そう思ってしまっていて、胸が少し苦しかった。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加