わたし、異世界知識ゼロなんですけど!

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わたし、異世界知識ゼロなんですけど!

 24時間スーパーの夜勤の終わりが近づく頃、田中未子(たなかみこ)はふと腕時計を見やった。  ——午前6時を少し過ぎたところだ。  店内の照明は冷たい白色で、疲れた目にしみる。未子(みこ)は、長い夜勤の終わりを心待ちにしていたが、同時にその先にある日常にもうんざりしていた。 「やっと交代ね……」  つぶやきながら、彼女はレジ横に並ぶ商品棚を整えていた。ささやかなパートの仕事に従事するただの主婦。年齢的にも夜勤は辛く少しばかりくたびれていた。  夫は浮気を繰り返し、家計は火の車。それでもなんとか生活を維持するため、彼女はこの仕事を辞めるわけにはいかなかった。  毎日のように繰り返される倦怠感と未来に対する不安は、いまにも彼女を圧し潰しそうになっていた。 「わたしの人生って……なんなんだろう」  ——そうつぶやいた瞬間、店全体が揺れ始めた。  地面の大きく揺れる音が耳をつんざく。 「大地震だ!」  未子は反射的に棚に手を伸ばし、倒れそうな商品を支えようとした。  しかし、次の瞬間——棚の上から巨大な荷物が落ちてきて、彼女の頭を直撃した。  意識が遠のく中で、——未子は自分の人生が、終わったのだと感じた。 (ああ、息子の体操着まだ乾かしてなかったわ……)  だが目を覚ましたとき、彼女は見知らぬ場所にいた。
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