仮友と笑えば

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 ひなちゃんが断らないのを知っていてそういう。 「じゃあすぐ近くに美味しい焼肉屋さんあるから行こ」  そういってふたりで一気に走り出した。  冷たい風が体温を奪いきる前にお店の中に入りたかったからだ。  店内は仕事終わりのサラリーマンや子ども連れ、カップルなどで溢れかえっていた。ガヤガヤと騒がしい店内、元々の予定だったお寿司屋さんは静かなのを思い出してこっちの方がいいと思った。ひなちゃんにアイツの話をしたかったから。 「私が頼んでいい?」 「うん」  ひなちゃんはメニューを見ない。  私はメニューを開きいくつか注文する。 「生ふたつ。カルビとハラミとロースを二人前、あとホルモンかミノかハツ……うーん、ハツ! これを一人前、あとサラダ。それとライスふたつ。とりあえずそれで」 「かしこまりました」  メニューを閉じ視線だけ上げていちおう聞く。 「よかった?」 「うん! もちろん」  細身の女ふたりにこれは頼みすぎだと思う。だけど私は人より食べるし、ひなちゃんはどうかわからないけど、今日はたくさん食べて嫌なことを忘れたいからと思って頼んだ。
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