仮友と笑えば

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 そうして私たちは百貨店の中に入る。  ドアを開けた瞬間に温風が冷えきった体を一気に優しく包み込む。中では薄着でも過ごせるくらいの暖かさとクリスマスソングが軽快に流れている。 「何買うか決めてるの?」 「うん」  私は狙っていたブランドコスメを片っ端から手に取った。 「そんなに?」  ウインドーショッピングだと思っていたひなちゃんは目を丸くする。私はそんなひなちゃんに構うことなくネットで気になっていたコスメを手にした。 「何かお探しでしょうか?」  張り付いた笑顔の女性がやってきて商機を逃すまいとピッタリとくっつく。 「いえ、もう決めているので」  そういっても女性は引き下がらない。 「こちらクリスマス限定色となっていてたいへん人気のお色なんですよ」  今まで限定色、人気、なんて聞いたらたいていの客が食いついてきたんだろう。彼女は自信たっぷりの笑みを浮かべ新作のリップを勧めてくる。  だけど私はそれには目もくれず定番色を手にする。 「お客さま、肌色診断はされたことありますか? お客さまの肌に合ったコスメを選べますよ」 「あ、はい、私ブルベ夏らしいです」
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