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プロローグ
もう私に季節の移り変わりを教えてくれるのは、
一輪挿しの花瓶に彩られた花だけになってしま
った。
数年前、不慮の事故により自由の利かなくなった私の身体は今は目線を動かすかやすりで表面を
削られる様な刺激に痛む喉を庇いながら一言、
二言話すくらいしか出来ない無用の長物だ。
「ほら恵梨、田舎のおじいちゃん達からお土産
貰ったわよ。」
ぼんやりとした視界に写るそれは、赤いリボンの
付いた熊のぬいぐるみだ。
また人形か、と恵梨は思う。祖父、祖母は恵梨が入院してから定期的に人形の類いを送り付けて
来る様になった。
可愛い。確かに可愛いけれど…。窓際に並ぶ
お人形達を見ていると、まるでゲームキャラの
残機みたいで不謹慎だ。
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