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〇虹野邸・アトリエ・中    洋風なアトリエの中央で、七色のド派手な衣装を着た虹野幻師(50)        が、重厚な椅子に座っている。    アトリエの壁には22枚の絵画が飾ってある。    ローズマリー(30)がそれらを眺めながら、紅茶カップを片手に歩い    ている。    並んだ絵画の間に、一枚だけ何も飾っていない場所がある。 ローズマリー「一枚、抜けていますが?」    虹野、紅茶を一口。 虹野「曲が届いていないからね」 ローズマリー「曲、ですか?」    虹野がパチンと指を弾くと、一枚の絵「愚者」にスポットライトが当た    り、どこからともなく音楽が鳴る。 虹野「これ等は全て、私と音楽家の華麗なるコラボレーション。私の書いた絵に、22人の音楽家が曲を作ってくれたのさ」    ローズマリーは、抜けている場所の隣の絵を見る。 ローズマリー「ジ・ハングマン(吊るされた男)」    その隣の絵「節制」を見る。 ローズマリー「テンペランス……。なるほどタロットですか。さしずめ、展覧会の絵の模倣遊戯。休日と自尊心に満ちた芸術家が好みそうな暇つぶしですね……。と、なれば」    一枚、空いている場所を指さす。 ローズマリー「デス」    ローズマリーも椅子へと座り、小机に置いていたカップへ紅茶を注ぐ。 ローズマリー「音楽家への依頼はいつ頃ですか?」 虹野「一年前だよ」 ローズマリー「死んでいるのでは? デスだけに」    しんと鎮まるアトリエ。
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