血気のシンフォニア

本文

　　　アナウンサーはあっけにとられ、観客もざわつく。
アナウンサー「え、はぁ……と申されますと」
　　　緑山、花束を肩に担いで首を回す。
緑山「もう、残りの余生は廃人で十分でしょう。都会は人で煩いですからね、地元にでも戻って自然と共に暮らしていきますよ。では、都会の皆様！　良き、騒々しい人生を！」
　　　緑山、舞台を去っていく。
　　　騒然とする会場。

〇アパート・駐車場・外
　　　乗用車が止まっており、運転席の田岡（５５）がスマホで会見の様子を　　
　　　見ている。
田岡「地元……」
　　　運転席のドアのガラスを、ヤクザ風の男がノックする。
　　　田岡、これに頷きスマホをしまうと、いかついスーツの襟を立てて車を　
　　　降りる。
　　　同時に、強面をつくり声をしわがらせる。
田岡「おい、山本！　いるんだろうな！　今日こそ、借りたもんは返してもらうからな！」
　　　怒鳴りながらアパートを上がっていく。

〇烏島家・外観
　　　古びたシャッター商店街の隅にある二階建て住宅。
　　　一階はスナックで、二階の住居窓が開いている。

〇同・鳥の部屋・中
　　　扇風機を回してテレビの前に座っている烏島鳥（１７）。
　　　テレビでは緑山が音楽ホールから去っていく姿。