血気のシンフォニア

本文

緑山「屋上があるのか」

〇同・屋上・外
　　　鳥がトランペットを持ち、息を吸い込む。
　　　緑山が階段から上がり、ドアを開くと同時に、トランペットの音が響き
　　　渡る。
　　　緑山は驚き、腰を抜かす。
緑山「な、ん」
　　　トランペットを吹く鳥が屋上に立っている。
　　　鳥の背後で鳩が飛んでいく。
　　　鳥は振り返る。
鳥「ん？」
　　　緑山、鳥の顔立ちを見て、ぐっと唾を飲み込む。
鳥「え？」
緑山「君……」
鳥「誰、ですか？」
　　　鳥は　しばし呆然としているが、あっと驚く。
鳥「えええ！　ここ、誰か住んでたんですか？」
緑山「あ、あぁ」
鳥「すいません、ずっと空き家だったので、練習に使ってました」
　　　屋上の端を見ると、はしごが掛かっている。
緑山「あぁ、そう……今日から越してきたんだ」
　　　鳥は眉を下げる。
鳥「そう、ですか。じゃあ、ここはもう使えないですね」
　　　ピクっと緑山の耳が動く。
　　　緑山、真剣な面持ちになり、鳥の顏を観察する。
　　　観察しながら、鳥へ近づいてくる。