みゃーちゃん

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みゃーちゃん

 蓋が閉じて置かれていたダンボール。  蓋を開けて暗闇の中に光が差すと、姿を現したのは小さな子猫だった。  まだ生まれて間もないその子は「みゃー」と何度も鳴いて私を見ている。  その姿を見て、この子は必死に生きようとしているんだと感じ、私は一度家に戻りタオルを持ってくると、その小さな身体を包み動物病院へと連れて行く。  とくに怪我も病気もないと先生は言ったが、どうやら食事をとっていないらしくお腹を空かせていると聞いた私は、一度家に子猫を連れて行くと急いで近くのスーパーでキャットフードやミルクなどを購入した。  生き物を今までに飼ったことがなかった私の知識は、捨て猫は取り敢えず最初に病院で見てもらうというものだけ。  家に帰り部屋の中を見ると、子猫は最初に私が置いたときのままタオルの上でぐったりしている。  きっとお腹が空いて動くことができないんだろう。  こんなに小さいからまだキャットフードは食べれなかったりするんだろうかと色々考えて、一つの器にはキャットフード、もう一つの器にはミルクを入れて子猫の前に置く。  それに気付いた子猫が目を開けると、ミルクをペロペロと飲みキャットフードまで食べ始めた。  どうやらどちらも大丈夫みたいで、余程お腹が空いていたのかどちらの器もキレイに完食。  それから数年後——。  正直あの後は、ネットで猫の飼い方を調べたりして色々と大変だったりしたけど、友達のお陰で凄く助かった。  そんな友達は、まだ拾った当初の猫ちゃんを写真でしか見たことがなくて、一度私の猫ちゃんを見てみたいって事で今日はお披露目会。 「この子が私の猫ちゃん。名前はみゃーちゃんなんだ」 「え……っと……」  言葉に困る友達。  それもそのはず。  みゃーちゃんはかなりの大食いであっという間に育ち、顔はまるでボスみたいに厳つく、数年で貫禄と存在感が凄くなっていた。  それも、当初の頃の可愛さからみゃーちゃんなんて名前をつけたけど、れっきとしたオス猫。  名前とのギャップが違い過ぎるまでに立派に成長した。  こんなに変わった見た目でも、みゃーちゃんは今も「みゃー」と鳴いてくれる。  ただし、ドスのきいた声で。 《完》
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