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平均的な背丈と思われる温和そうな年配男性が、課長が話していた営業担当の常務という方だろう。
その横にいるもうひとりの男性に視線を向けて、私は思わず目を見張った。
164センチある私が完全に見上げなければいけない長身は、180センチを超えているだろう。ダークブルーのスーツを隙なく着こなし、同系色のネクタイをきっちり締めている。にもかかわらず堅苦しい印象はなくて、むしろ親しみやすさを感じさせる。
それは芸能人並みに整った顔に浮かぶ、完璧なまでに爽やかな微笑みのせいだろう。こちらを向いてにっこりと笑む様は、グラビア写真の撮影に臨む人気タレントのようだった。
課長の話から推測すれば、この人がフェアルート商事の新しい営業部長なのだろうけど……どう見ても同年代にしか思えないこの若さで、あの大手商社の営業部長?
「営業1課の方ですか?」
年配の男性にそう声をかけられ、はっと我に返る。
「そ、そうです。失礼いたしました。営業1課の相崎と申します」
「フェアルート商事の営業担当、深原と申します。こちらは坂根。今月より営業部長に就任しましたので、ご挨拶に伺いました」
「はい、承っております。こちらへどうぞ」
私が先に立ち、フロア奥にある応接室へと二人を案内する。
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