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堅物の信繁が「恋愛の神様」と渾名された訳
『城』
ある日の談話室
「先輩……僕はどうしらたよいのでしょうか?」
女性は(あまり)知らない事だが、男性だって『恋の話』
〜艶めく『噂話』は大好物だ
少なくとも「数時間」程度は軽く、嘘かホントかわからないまことしやかな噂話でワァワァアホみたく美味しく盛り上がれる程度の自信は皆有る
これはそんなある日の出来事だ
『城』所属
〜特殊部隊班・脳筋メンバーのいつも通りの「あほらしい恋バナ」は、本日の生け贄ターゲットをどうやら一番若い隊員に決めたようだ
現在『意中の女性に告白したい』という、健気で初々しい新人男性隊員
先輩諸氏は、この滅多にない『格好のリアル』に全員の関心は全力で移っていた
「え〜〜〜〜 ”彼女”かぁ」
「はぁ?寄りにもよって?」
「ちょっ、いくら何でもおま〜高望み過ぎるだろ!」
「アッホじゃね〜〜〜?」
というのも彼が恋した相手というのは『城』女性職員中、男性にも女性にも非常に人望がある有名人
(男性が失敬にも勝手に極秘ランキングしている女性で)
トップテンどころか五本の指にも入るという、超がつく物凄い人気者
〜けれども日常的にも告白なんざしょっちゅうだろうに、何故か摩訶不思議な事に彼氏持ちでは無い
そんな背景を聞いただけでひぇいとビビってしまう強者に、この若者はなんとか告白したい、けれどどうしても気持ちが折れ足がすくみ勇気が出ないという
「……僕なんか相手にされるはず無いでっす」
新人隊員君のツヤツヤスベスベの頬がパーーッといきなり真っ赤になる
まるで林檎飴だ
〜彼がガクッと俯いたせいで、反動で癖の無い天使の輪付サラサラ髪がパサッと顔にかかる
パチパチするバンビみたいな大きな目に長い睫毛
男から見たって嘘みたくカワイイ!
『思わず見とれてしまったじゃないか!』
『今時の若者はま〜ぁ』
『俺らだってキュン死しそうなコイツがフラれたら、彼女に誰が行ったって無理じゃね?!』
〜本音として全員先輩諸氏は内心ポヤポヤ思ったのだが
せめてもの男気で、ケシカランそれらは一言も口に出さず、つい何時もの癖で全然可愛くない憎まれ口をそれぞれ叩く
言ってみれば”パブロフの犬”的お約束だ
「んなこと知るかよ馬ーーー鹿」
「おまえの格好いい頭は帽子被るためにだけ付いてんのかよ?
ちったー自分で考えろや」
「お前の耳は餃子で出来てんのか!」
「でも
本当にどうしたらいいかボクわかんないしぃーー」
しょぼーーーーーーんーーー
『マズイ』
『嘘だろオイ〜!
コイツ本気で好きなんだ』
『ヤバイヤバイヤバイマズイマズイマズイ
チョーシこいて からかい過ぎちゃったよっ!!』
さぁどうする?
皆ふーむと腕組みをした
『おっしゃぁー
俺達の可愛い新人君のために!!
いっちょここは一肌脱いでやろうじゃないか』
口はクソ悪いが〜
全員、根は良い善人な彼等は柄にもなく本気でそう考えた
「俺達に任せろよ〜」
「大船に乗った気で居ろよ?」
心強い発言に、ぱぁぁぁぁ〜〜っ♡
ドップリ地底を這う様の新人君の表情が一気に明るくなった
『ジーーーーンーー』
『コイツ可愛いなぁ〜ーーー』
『アー自分偉くなった気がするぞ!!』
これぞ 先輩冥利だ
ウルウル感動で胸がいっぱいだ
頑張って辛いキツい人でなし鬼激ムズ業務を遂行してきてホント良かったぜ!
皆得意そうにフフンと鼻を蠢かす
とはいうもののーーーーー
さてここで問題です
自分達は銃火器が飛び交う鉄火場はそんなには怖くない
正直な話、女性に『告白』だなんてそっちの方が遙かに恐怖である
「一体全体こういう時どうすればいいんだ?」
皆でヒソヒソ内緒話、作戦会議開始である
「薔薇の花束でも携え、兎に角グッとくる言葉を何か言えばいいんじゃね?」
「~いや、プロポーズじゃないんだし、いくら何でも重いっしょ?」
「キモいわ」
「撃ち殺す」
「馬鹿、ンなの怖いに決まってるだろ??
相手ぜってーストーカー認定して引くぞ?」
「俺らの優秀な同僚、秒で特殊部隊別班に拘束されるし?」
「だよな〜〜〜!」
「待ち伏せしてプルプルしてたら『不審者』
通報されて終了に間違いない」
「うーーーん〜〜〜」
「何かコレはっての?
誰か超絶アイディア〜ってないかよ」
で必要は発明の母(違)
『アッツ!!』
突如ピンッ!!と閃いた隊員達
全員の視線ズザッと一斉、とある1点に向けられる
寮・談話室の片隅
有名な、彼等と同業務の同僚が偶然居た
”城・特殊部隊”折り紙付き精鋭班〜
『信繁班・班長』
異常な程に優秀な班員を更に水も漏らさぬ鉄壁の驚異の統率力で率いる美形中の美形リーダー、信繁が座っていた
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