最終章:最期の町

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最終章:最期の町

20XX年 春 「ユウぅ! こっちだよぉ~!」 呼んでる声が聞こえてきた。 その声はもちろん、ミミのものだった。 「はぁ、今行くよ!」 俺は、走ってミミのもとへ行く。 明るい日差し。緑豊かになった最期の町。 「・・・お、お姉ちゃん、速いよぉ!」 後ろから走り寄る、学生服のような服をだらしなく来た娘。 ミミの妹、ミナ。 さらに、ミナと手をつなぐ幼い女の子、メメもいた。 「遠く行きすぎんなよな!」 遠くから声を掛ける男。ケン。 「ねぇユウ」 「ん、何だ?」 ミミは、倒れたビルの残骸の上に座って呼びかけている。 そして、その隣に座ると、彼女はこう話しかけてきた。 「なんで隣に座るの?」 「え、いいじゃないか」 「無理」 理不尽だ、そう癖で心の中で愚痴をこぼす。 「ぷっ、その顔、ははは!」 「なんだよ、ひどいなぁ!」 そして、笑い続けていたミミは笑いを収めると、少し咳払い。 「ごほん。まぁ、それは冗談で・・・」 ミミは本題に入ったようだ。身体をしっかりこちらに向けると真剣な顔でこう言った。 「《協力者》脱退は正解だったのかな?」 それは、が終わった翌日のことだった。 拠点に戻りながら、回復したミミは、俺と荷物を取りに戻った。 「うげぇ、これは何⁈」 シリウスも、ユーリも、今はハエがたかる腐敗物になっていたようだ。 溢れ出る腐敗臭に顔をしかめつつも、辺りを見回す。 「シリウス・・・そうか、死んだのか」 ミミはシリウスの亡骸(なきがら)を眺めながら、もの悲しそうに言った。 そして、こちらに向き直った。 「《協力者》、脱退しよう」 「・・・えぇ⁈」 理由は、『リーダーが死んだから』である。 納得がいくが驚きだ。俺のことも勧誘するぐらい、まるで生きがいかのように大切にしていた《協力者》から脱退するなんて、思ってもいなかった。 反論しようとしたが、無駄だと感じて、結局それを了承した。 「う~ん、そうだなぁ・・・う~ん・・・」 「どっち、どっちぃ!」 脱退直前を思い返して、そして答えた。 「正解だったよ。だって・・・」 言葉を続けるのは難しかったが、頑張って言葉を紡いだ。 「こんなに幸せで、そして平和に過ごせるなら、それが正解だからだよ」 そうして、この歯車が狂って壊れた世界で過ごす僕らは、唯一の幸せを手に入れたのであった。
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