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「━━━━━━……はぁ~~~、良いわぁ。最高過ぎる!!最新刊の続編BL小説、【今宵も、弟と俺は禁忌を絡めあう】……。序盤でコレは、堪らないわぁ~~……」
私は、竜泉寺 巴 社会人一年生。
そして平安時代から続いている裏稼業、〈厄除師〉と呼ばれる特殊能力を持った厄払い一族でもある。
厄除師はそれぞれ干支にちなんだ苗字になっており、私の家族は【龍】の分家にあたる。
━━━━……と言っても、厄除師のシゴトらしいシゴトをしていない私。
シゴトと言っても、〈モノを通しての外傷治療〉しかできないので戦闘力外として外されていることが多い。
なので。今は大手メーカーの正社員として勤務しており、ただいま自室内にて小説を読んでいる。
自営の手伝いを終わらせた後。マッハの如く、黒髪を一つ結びしていた髪留めを解き、入浴を済ます。
乾燥しやすい、この時期。お風呂上がりにこの小柄な細身に、先日購入したボディバターを全身に塗り込むと、上皮から奥深くへとスゥー……と浸透していくのを感じた。おまけに、シトラスローズティーの香りが鼻腔を擽り仕事で疲れ切った脳細胞を優しく包み込む。
(薔薇の華やかな蕩ける紅茶の香りに、サッパリとした柑橘系のシトラスの香りが補って………。軽やかな爽やかな後引きな芳香になっていくわ………)
「この香りは、当たりね!さて………、通販で購入できて良かったわ。明日は有給だし。久々に夜更かしして先生の作品を堪能できるわ♬」
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私が物心ついた時には ━━━。
両親は日帰り温泉の経営をしており。今は県内にある本店以外に、追加で2店舗も商売をしている状態であった。
そんな状況下の中、お客様に愛されて三十年以上。おかげさまで、今日まで商売繫盛である。
特に、人気の温泉が〈炭酸美白温泉〉。
この温泉は、源泉の中に”外傷治癒”の能力を加えてから、昔より評判が良くなっている状況である。
そんなこんなで………現在、平日でも通常休日でも客商売で時間に追われるのは、日常茶飯事であった。
そして、特に繁忙期は、地獄以外何もない。
━━━━なので。お盆、年末年始などの会社カレンダーが休日の時は、普段平日勤務しているパートさんたちがお休みになることは多いのが現実。
お子さん持ちだから、仕方ないし。それに………、
(スタッフさんが一生懸命働いてくれているおかげで、経営が成り立っているからね)
だから、スタッフさんにも感謝しなきゃいけないし。繫忙期のお休みも良しとしている。
それは私が幼い頃に、両親から教わったことの一つだ。
そんな流れで、自営業の従業員として手伝いに入っているのも当たり前となっている。
そんな状況を送っていると、自然と欲しくなるのだ。
━━━━━━ 生きる糧である、潤いが。
社会人一年生が過ぎ始めると、時間の追われ方が学生時代と違くなってくる。
こんなストレス社会に揉みくちゃされると溜まってくる、〈心の渇望〉。
OLの仕事と自営業の手伝いでのダブルワークで、この一年間で貯金はぶっちゃけると貯まった。
最初は、ゼロの桁数が多くなっていくに連れて喜んでいた。
だが………、こうも仕事に時間を追われていく日々を送っていると〈自分の時間〉というものがなくなるわけで………。
使い道がなくなってしまう。使うとしたら、会社帰りにコンビニでの経済雑誌、薬局でコスメの購入して自宅へ帰る。その後は、自営の手伝いを数時間。
平日は、経理の手伝い。休日は、接客スタッフの手伝い。
コレが、私のルーティンである。
自分の時間が無さすぎて………………、辛い以外何も無いのが本音。
そんな、一か月前。
花金こと、OL連休前の金曜日の夕方のこと。久々に学生時代の親友と会った。
その親友とは、女子高校生時代に趣味が合い意気投合し仲良くなった。それから卒業した後。お互いに時間が合わず、なかなか会えることができなかった。
「久しぶり~!巴」
「うん、久しぶりね!りえ。あれ!?コスメ変えた??」
「そうなの!よく分かったわね。社会人になったからね~、控えめにしてみたのよ」
「それも、似合っているわよ。それじゃ、予約したお店に行こっか」
その後、個室ありの居酒屋でハイボールを飲んでいた時のことだ。
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