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 佳菜子(かなこ)とは、一年ぐらい同棲(どうせい)したよ。  おれたちは、ふたりとも同じ派遣(はけん)会社に登録していた。  あるとき工場勤務(きんむ)で、同じ職場になって、そのことを知ったんだ。それがきっかけで親しくなり、同棲するまでにいたった、というわけ。  でも、同棲するうちに、だんだんと彼女のいやな面が見えてきてね。正直言って、一年もたつと、そろそろ別れたい、と思うようになった。  佳菜子のほうは、逆におれと結婚したがっていた。派遣どうしで結婚したって、ろくな暮らしはできないのにね。  おまけに、ある日突然、 ――できちゃった。  なんて言いだした。妊娠(にんしん)したんだよ。  ちゃんとコンコーム使ってたんだけどな。  もしかすると、佳菜子がゴムに穴をあけておいたんじゃないか、って、おれは疑ったもんだ。  それはともかく。  できたものは、なんとかしなくちゃいけない。子供を産むとなったら、その間、おれだけの稼ぎになるわけだ。とてもじゃないけど、やっていけないもん。  友だちから金借りてくるから、「(おろ)せ」って言ったんだ。  佳菜子は拒否した。  喧嘩(けんか)になり、もみあいになった。はずみで、ちょっと佳菜子を突きとばしたら、ちゃぶ台のかどに頭をぶつけた。それっきり、床に倒れて動かなくなった。  はっと気がついて、呼びかけたんだけど、ぴくりともしない。  近づいて、様子を見た。  息をしていないし、心臓も止まっていた。 ――死んだ。  おれは腰をぬかしたよ。
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