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みんなで家へ入り、ヘペㇾの肉を熊鍋にしていただく。
おれはなかなか手を付けられず、碗から立ちのぼる湯気をぼんやり見つめた。
やがてばあちゃんが英雄叙事詩を語り始めたけれど、一番盛り上がるところでやめた。そうするとカムイが続きを聞きたくなって、また土産を持ってアイヌモシㇼに戻ってきてくれるという。
――前世のおれが死んだとき、向こうの父さんや母さんもそう信じたんだろうか。
また生まれ変わって、自分たちのところに帰ってきてくれると思うことで、少しは安らいだだろうか。
宴を抜け出し、祭壇の前でヘペㇾの頭骨を見上げた。
おれたちのこと、恨んでないかな。
本当に、アイヌモシㇼはいいところだと思ってくれたかな。
自然にオンカミの動作をしていた。何度も何度も掌をすり合わせ、上下に動かす。手がかじかみ、涙と鼻水でぐちゃぐちゃになった顔が凍れても。
お前を育てさせてくれてありがとう。
いのちが他のいのちを育てること。それを教えてくれたお前とお前の母さんに、たくさんの感謝を込めて。
もしお互い別の形で生まれ変わったとしても、きっとまた会えるように。
その時まで。
じゃあ、またね!
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