実 験

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実験開始から一週間たった。その間、丈晃はそれぞれの箱をライブカメラで注意深く観察していたが、最初のうちは特に変わったことはなかった。 数日後、丈晃はライブ映像では見逃していた何かがあるのではないかと思い、これまで録画してきた映像を見直していた。 「ん?なんだこれは?」 ライブ映像と録画映像の間に、微妙な違いがあることに気付いた。録画された映像では、量子は規則的に動いている。静かで、秩序が保たれたような動きなのだ。だが、ライブ映像を見ていた時は量子はもっと異常に、まるで意志を持つかのように反応していたのだ。 丈晃はその違和感に戸惑いつつも、自分が感じた違和感に確信を持つことが出来ず、そのまま実験を続行した。 *** 日を追うごとに、それぞれの量子に変化が現れ始めた。 喜びのエネルギーを送った箱の量子は、それ自体も明るくほのかに発光し、動きも柔らかで光の波を描いているようだった。怒りのエネルギーを送った量子は、暴れ回るように激しい動きをして、まるで火山の噴火を思わせるようなエネルギーが量子を取り巻いていた。無感情の量子は、ただただ無気力に静止しており、変化のない冷えた静寂に包まれていた。そして、すべての感情を混ぜた量子は、不規則で混乱した動きを繰り返し、一瞬一瞬でその動きが変化していた。
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